嗤うノウゼンカズラ– category –
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1日目-夜
チェックインを済ませ、部屋に入ったアラン。兎にも角にもまずは部屋中を確認すると、内側からチェーンロックをかける。オートロックで外側から開けられないらしいが、それでも念のためだ。念のため、にしてはいささか心許ないのだけれども。窓もはめ殺... -
1日目-昼02
「で、気になってる店ってどこなんですか」「そんなに急かすんじゃねえ。お前、観光客だろ。その辺でもキョロキョロしてたらどうだ」 悪い景色じゃないだろ。 男がそう言うように、たしかに風景は悪くはない。白を基調とした建物は、材質やデザインもそ... -
1日目-昼01
「カッコイイなこれ……シンプルで……」 アランは手首に巻かれたスマートデバイスを見ていた。手首を捻ったり、あちこちの角度から見ても、それはただのシルバーの飾り気のないブレスレットだ。ブレスレット、というにはいささか男性的で無骨なデザインで... -
プロローグ
この世界は総じてわりとクソなところが多いと思う。 例えば、両親が蒸発するとか。例えば、蒸発した両親がアホみたいな額面の借金の連帯保証人になっていたとか。例えば、残された子どもが、その借金をこつこつ返済しているとか。例えば、子どもの妹が...