ハリエンジュの赤い星– category –
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ハリエンジュの赤い星
青臭い哲学者
title by scald(http://striper999.web.fc2.com/) 「節分ですか」「そ。知ってんでしょ」「ええ。元は季節の始まり、立春などの前日を指していましたが、江戸時代のころから主に立春の前日を指すようになったのだとか」「へえ。そうだったんだ。そこまで... -
ハリエンジュの赤い星
ベリーもナッツもここでは無用
「クリスマスじゃん」「ええ、キリスト降誕祭と聞きましたので。欧米では一般に家族で過ごすものと聞いておりますが、日本では恋人と過ごすと聞きました。ぼくと優はそのような関係性ではありませんが、そのように誤解されることも多々ありますから、ぼく... -
ハリエンジュの赤い星
犬の跳ねる白の絨毯
ほかほかと湯気を立てている中華まんを、あち、と言いながら優は掴む。敷き紙を剥がして中華まんを二つに割る――中は肉まんのそれの片方を千種川に渡す。きょとん、としている彼に、あげる、と優は言う。首を傾げている彼に、ため息をつきながら優は手に... -
ハリエンジュの赤い星
カルディアー
ぽってりした唇はつん、と尖らせる必要すらないほど女性的だ。垂れ目だとはいえ、女性にしては精悍な顔立ちの中で、そこだけは嫌に肉感的だ。ふっくらとした唇は、むしゃぶりつきたくなる。 窓に薄く反射する彼女の肉感的な体に、店の外にいる男も、店... -
ハリエンジュの赤い星
どんなにたくさん夜があっても
title by as far as I know(http://m45.o.oo7.jp/) 「秋っぽいことしよ。月見とか」「なるほど。中秋の名月というには早すぎますが、今晩月を見ますか?」「いいよ。夜中に出歩いても、別にうちの親はなんも言わないしね」「ふむ。ですが、あまりに遅い... -
ハリエンジュの赤い星
音声レポート5
美しい肉体を廃棄する――肉体に死を与えることをけろりと言ってのける千種川に、もったいないけど生き残れなかったなら仕方ないよね、と優は返す。まるで他人事だ。 時刻は十八時を半分ほど回ったところで、二人はすでに夕飯を食べ終えていた。さすが高... -
ハリエンジュの赤い星
音声レポート4
「なんで来たのかは分かったし、どこから来たのかも分かったけどさ。気になってることがあるんだよね」「なんでしょうか。開示できる範囲であればお答えします」「あんたの身体と、その身体の元持ち主については話せる?」「ええ。話すことは可能です。千... -
ハリエンジュの赤い星
音声レポート3
「察していると思いますが、ぼくたちは人ではありません。いえ、正しくいうならば──地球人ではない、と言うべきでしょう」 機械的な声色を少し緩めて、美しい楽器のような声で語りかける千種川。怜悧な硬質なガラスのような声色が常の彼が、柔らかな――人... -
ハリエンジュの赤い星
音声レポート2
イスに腰を下ろして話しかけてくる千種川。クイーンサイズのベッドにあぐらをかいて座った優は、あー……と声を出すと、がしがしと頭をかく。考えがまとまらないと言わんばかりの様子の彼女を、ただ千種川はじっと見つめている。まとまるまで待つつもりの... -
ハリエンジュの赤い星
音声レポート1
ちらちら、と見られていることには慣れている。どんなに訓練された人間であっても、目の前の男には視線を向けざるを得ないのだ。これはそういう外見をしているのだから。 紫がかった黒髪は、染めることなど一度もしたことがないような美しさだ。重たげ...